ひとりごとですけども

ひとりごとをひとり呟く場所

別の世界

友達と過ごしていると、ときたま「このまま現実に戻りたくない」と感じる。

まぎれもなく現実で過ごしているはずなのに。

ぼくにとって友達といる時間は、一種の逃避行だ。どこか時間の流れが異なる、周りのことなんか何も目に入らない、不思議な空間への逃避行。

そこにいる間は、自分はなんでもできるしどこへでもいけるような気持ちになる。

ぼくの悩みは彼らの悩みにもなりえるし、ぼくらはこころの一部を共有している。

別れ際、もう時間が来てしまっているのにふと、引きはがされるように感じてまだここにいたいと思う。

かつて学生時代にそうしたようにまた明日も朝から晩までこの人とずっと過ごしたいと思う。

明日が来ることにおびえず、明日会ったら話したいことがたくさんあって、家に帰ってから次に会うのが待ちきれない。

もう永遠に戻ってこない彼らとの時間を、ごく短い時間、もう一度味わう。

その時間が、ぼくをかろうじて生き長らえさせる。

本当に起きていることなのに、どこか夢心地。

彼らと行った場所をあとから一人で通りかかっても、それはどこか違う場所のように感じる。

友達がいるだけで、その場所や料理や建物、そこにいた他の人まで特別に見える。

この世界のどこかに、友達と過ごした世界が別のものとして存在しているような感じがする。