ひとりごとですけども

ひとりごとをひとり呟く場所

思い出の味

ぼくには、土地の記憶と根付いた思い出の味がある。

人生の大半を過ごした実家のちかくにあった、内装が派手なカフェ。

アメリカに住んでいたころ、カロリーに殺されそうといいながら通った創作料理屋さん。

スペインの田舎にある朝ごはんと一緒に一フレーズ新しいことばを教えてくれたネーミングセンスがスペイン独特だったバル。

今住んでいる家の近くでフランス人シェフが営んでいる小さなビストロ。

旅先で行った、さまざまなお店。その土地にいた頃を思い出すとき、いつもぼくの記憶のなかにはその味がある。

美味しい記憶は、楽しい時間の証明でもある。一緒にいる人といる時間が楽しくないと、食事は美味しく感じられないからだ。楽しかった過去の自分を想うと心があったかくなる。

先日友人と初めて訪れたレストランがおいしくて、あまり気乗りのしない約束でもう一度その店を訪れた。せめて食事だけはおいしいものを食べようと思ったのだ。

ところがどっこい、ぼくの目論見は大外れしやはり誰と食べるかということが大きく食事の味に影響すると再認識させられることになった。

こういうおいしくない記憶もまた、思い出の味なのだろうか。それはちょっと早めに忘れたいけどなあ。