にゃあ
ぼくは旅行が大好きだ。今年の夏も、9月のほとんどを旅行に費やした。
ぼくにとって旅行は、全責任の放棄に等しい。ときどき、ねこになりたい人をtwitter等で見かけるが、旅行中のぼくはねこになれるのだ。いいだろう。
というのも、ぼくにとっては始めから旅行とはねこになることなのだ。
ぼくの従兄弟は、日本ではない国に育った。ぼくはよく母とふたり、もしくは祖父と三人で従兄弟を訪ねとんだものだった。
当然、従兄弟たちにはその場で営む生活があって、いかなきゃいけない場所、起きなきゃいけない時間、しなきゃいけないことがあった。ぼくにだって、日本にいる限りつきまとう社会との約束がある。でも、従兄弟たちの国にお邪魔するあいだ、ぼくはねこだった。
幼稚園や学校は行かなくていいし、朝は何時に起きてもいいし、誰かと話さなきゃいけない義務も、するべきこともない。ぼくはそんな時間が大好きだった。
それでも、いろんな観光地へ行ってみたりその地に根差した生活を垣間見たりするのも、自分の好きなときに好きなだけしたくなってきたのがいまのぼくだ。そんなぼくは、ねこときどき人間として旅行に行く。
帰国してすぐ、荷ほどきをする。荷ほどきが次の旅行への準備のように感じる。さあ、次はどこでねこになろうかな。