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ぼくはおもしろいものがすきだ。
おもしろいものって、どのポイントをおもしろいと思うのか、どうして面白いと思うのか、わからないところもおもしろい。
起こったことに対して、感じたことの言語化もできていないまま、何年もたってしまった経験もある。
大学三年の頃、ドイツで友人の家に居候していたときのこと。
お財布の中に、珍しく大きめの札をいれたぼくは、お金がたりなくなるような恐怖もなくルンルン外出した。
トラムで移動しようとバス停にいたぼくは、全く知らないおじいさんからニコニコと微笑みかけられた。
そのときなんだか気味が悪く感じてしまい、ぼくは目を合わせないようにしてしまった。
トラムがきて乗り込んだぼくは、運賃を払う機械が札を受け入れていないことに気づき軽くパニックになった。
ドイツにいたのは友人の家があったからで、ドイツ語が堪能なわけではないので誰にも自分の状況も説明できなかったのだ。
そのとき先のご老人が、なにもいわずぼくの運賃をはらってくれた。
そのとき、ぼくはきづいた。ご老人の腕が一本しかないことに。
ぼくは本当に自分を恥ずかしく思ったし、その後の記憶が曖昧だ。人生で一番、何を感じたのか言語化できないような出来事だった。
こういうことがあるって、おもしろい世界だなと思う。