ひとりごとですけども

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ねえねえ聞いてって思わない

大学の卒業論文のテーマがベラスケスを中心とするスペイン王宮史とスペイン経済史だった。

ぼくは本当にベラスケスが好きだし、スペインという国への愛着があってしょっちゅう本を読んでいたし年に一回は現地を訪れていたのでとても順調に進むように思われた。

でも予想は外れるもので、驚くほど追い詰められた。

指導教授とテーマについて話しているとき、気になる本を選ぶときはとても楽しく、あっという間に時間が過ぎた。

それなのに、本を読むといつもは楽しい工程と論文のかたちを整える段階がとてつもなく進まなかった。

当時はなにがそんなにつらいのか全くわからずただただ時間を全て捧げて取り組むしかなかったのだが、最近あれは共有欲のなさかなと思うようになった。

例えばぼくは友人相手には面白かったこととか知れてうれしかったことの話をするのが大好きだ。でもそれは友人に限ったことで、知り合いや知らない人相手に、なにかを知ってほしい、共有したいというきもちが全然生まれないのだ。

ぼくにとって卒業論文を書くことは誰に向けたものでもなく、ただただ自分がもう知っていることを本を選択して読みながら整理しなおして書くという作業でしかなかったのだ。

きっと友人相手に同じような内容でプレゼンテーションをするほうがよっぽど気楽で簡単にできたような気がする。

進路を考えるとき、先生という道を友人から進められたりもしたが結局ぼくは知らない相手になにかを共有したくはならないだろうからうまくいかないんだろうなと思う。